ソニー、テンセントを提訴。「Horizon」シリーズの“模倣”ゲームを巡り法廷闘争に発展へ

ソニー、テンセントを提訴。「Horizon」シリーズの“模倣”ゲームを巡り法廷闘争に発展へ

7月28日、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、世界最大級のゲーム企業テンセント・ホールディングスを相手取り、アクションRPG「Horizon」シリーズの著作権・商標侵害を理由に米連邦裁判所にて訴訟を起こしたことを明らかにした。

訴状によれば、テンセント傘下のオーロラ・スタジオとポラリスクエストが開発中の新作タイトル「Light of Motiram」は、ソニーの「Horizon Zero Dawn」および「Horizon Forbidden West」と極めて類似しており、「スレーブ(奴隷)的なコピー」とまで表現されている。

ソニー側は訴訟において、「Light of Motiram」はロボットの動物型敵、部族風の衣装、弓矢による狩猟スタイルの戦闘、さらにはゲームタイトルのロゴに至るまで、「Horizon」シリーズを想起させる要素で溢れていると主張。さらに、実際のゲーム映像やプロモーション資料には、視覚的にも構造的にも著しい類似点が見受けられるという。

ソニーはまた、「Light of Motiram」の開発者が以前「Horizon」のライセンス獲得をSIEに持ちかけていた過去があることも明かした。このライセンス提案はSIEによって拒否されていたが、開発はそのまま継続されていたとされる。

2024年のGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)では、テンセント側が正式なライセンス取得を再度打診したが、ソニーはこれを再度拒絶。以降、ソニーはテンセントに対し、開発中止とブランド使用の中止を求めてきたが、対応が得られなかったため、今回の法的措置に踏み切ったという。

SNSや業界メディアでもこの件は大きく取り上げられており、「Horizon Zero Originality(=創造性ゼロのHorizon)」と揶揄されるなど、批判の声が広がっている。

ソニーは今回の訴訟で、開発中のゲームの公開および販売の差し止め、最大1作品につき15万ドル(約2,300万円)の損害賠償、加えてすべての関連資料や宣伝物の破棄を求めている。

本件は、アメリカ・カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に「Sony Interactive Entertainment LLC v. Tencent Holdings Ltd」の名称で提訴されており、訴訟番号は「3:25-cv-06275」となっている。ソニー側は大手法律事務所Orrick Herrington & Sutcliffeが代理人を務めており、テンセント側の法的代表は現時点で明かされていない。

今回の訴訟は、ゲーム業界における知的財産(IP)の保護に関する議論をさらに加速させる可能性が高い。特に、ゲームの「構造」や「ビジュアルスタイル」がどこまで著作権の対象となるのかという点が、今後の注目点となる。

近年では、任天堂と「Palworld(パルワールド)」開発元との類似性問題も記憶に新しく、ゲーム業界においてIP管理の厳格化が進む中、今回のソニーとテンセントの対立は大きな前例となる可能性を孕んでいる。

大量の開発者がレイオフされ、代わりにAIによる開発ツールが浸透していくなか、本件のような類似箇所が多く見られる模倣タイトルが次々と登場してくるはずだ。したがって本件と似た問題が今後ますます増えていくのは間違いないだろう。ソニーとテンセントの対立がどのように帰結するのか、ゲームファンと業界関係者は、訴訟の行方と、その結末がゲーム産業に与える影響について注視している。

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