SteamとItchにて大人向けゲームが次々と削除される。決済会社の圧力が「創作活動への萎縮を生む」懸念も

SteamとItchにて大人向けゲームが次々と削除される。決済会社の圧力が「創作活動への萎縮を生む」懸念も

2025年7月、PC向けゲーム販売プラットフォーム「Steam」およびインディーゲーム配信サイト「Itch.io(イッチ・アイオー)」において、アダルト表現を含むゲームの削除・非表示化が相次いでいる。これらの措置は、主にVisaやMastercardといった大手クレジットカード会社からの圧力に起因するとされており、現在、ゲーム開発者やクリエイター、表現の自由を重視する支持者たちの間で大きな波紋を呼んでいる。

まず話題となったのは、Itch.io上で「NSFW(Not Safe For Work)」タグがついた作品が検索やカテゴリ一覧から突然姿を消したことだ。これは事前の通知もなく行われ、多くの開発者が自身のゲームが「発見できない状態」になっていることをSNSなどで報告した。

Itch.io運営側は後日、この対応について「決済サービスの規約に準拠するため」と説明し、NSFWタグ付き作品の全体的な再審査と方針の見直しを行っていると発表した。今後、開発者側にはコンテンツ内容を明示的に申告し、決済会社の規定に適合していることを証明する必要があるという。

一方、Valve社が運営するSteamにおいても、これと同時期に「性的暴力を含む可能性のある表現」が含まれたとされるアダルトゲームが削除された。これはSteamが7月に導入した新たな「コンテンツ制限ポリシー」に基づくもので、「決済パートナーとの契約を守るために必要な措置」とされている。

削除の対象となったのは、露骨な性描写を含む成人向けゲームだけでなく、LGBTQ+の性的自己認識や精神的トラウマをテーマとした作品、インディーアート系のビジュアルノベルなど多岐にわたる。中には賞を受賞した作品も含まれており、クリエイターからは「創作活動への萎縮を生む」「マイノリティ表現への圧力だ」とする批判が相次いだ。

こうした対応の背景には、保守系団体「Collective Shout」などがVisaやMastercardに対し、アダルトゲームに関する懸念を伝えたことがあるとされる。これにより、決済各社が配信プラットフォームに「問題ある作品の削除を求めた」との見方が強まっている。

この流れは一部で「ファイナンシャル・センサ―シップ(金融による検閲)」と呼ばれており、表現の自由に対する新たな脅威として注目されている。クリエイターの中には「創作表現が決済会社の倫理基準で左右されるなら、自由な制作は不可能になる」との声もある。

今回の事態は、アダルトコンテンツに対する倫理的な是非だけでなく、「誰が何を規制すべきなのか」というインターネット時代の根本的な問題を改めて浮き彫りにした。特に、Itch.ioのようなインディー向けプラットフォームにとっては、マイノリティや「マージナライズド/marginalized(社会的に周縁化された)」表現を発表する場としての役割が大きく、今回の動きはその存在意義自体に揺さぶりをかけていると言っていいだろう。

今後、Itch.ioおよびSteamは新しいガイドラインの整備と共に、どこまでが「表現」であり、どこからが「規制対象」となるのか、その境界線の明確化と運用の透明性が強く求められることになりそうだ。

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